産官学連携の中小企業経営革新支援事例2 竹内工業株式会社
中小企業に対する経営革新支援(事例2:竹内工業株式会社)
(1)竹内工業の概要(資本金1600万円、売上高27億円、従業員数100名)
竹内工業は1934年に設立され、化粧品の容器のめっきから事業を開始してきた。その後金属プレス成型により化粧品容器の一貫生産を実施して国内メーカーに対して納入してきた。装飾系めっきと深絞り高精度加工に技術的優位性を持っており、生産工場として墨田区本社、埼玉県八潮市と中国天津の3工場に生産設備を持っている。
(2)経営分析
竹内工業は国内化粧品メーカーに対して継続的な取引を確保することで、現状維持を目標としている。同社の強みは国内化粧品メーカーの要求に対応する高い開発力である。開発-量産までの一貫生産機能を持ち、中国天津工場の稼働によりコスト対応力を確保している。熟練工の存在により職人的な生産技術力を保持している。ISO9000取得済みであり管理体制も100人規模の企業としてはTOPレベルにあると言えよう。しかしながら少量多品種短納期による量産における採算性の悪化や、新規顧客や市場に対するマーケティングの不足による将来の収益源の確保が出来ておらず、変わらぬ生産体制から生じる組織の硬直化も随所に見受けられた。近年では国内化粧品市場の縮小による生産量の低下や国内生産の中国シフトが進行しており、今後は国内主要メーカーの生産拠点の中国進出による現地対応も考えられ、中国化粧品市場の成長や海外化粧品メーカーの中国進出も視野に入れた事業展開を行わなければならない。しかしながら同社においては既存取引顧客の要求に対する対応が中心であり、マーケティングを実施する部門がない為特別な市場調査や分析は実施されていない。新規顧客の獲得や市場の発掘については漠然と危機感を抱いているが日常業務に追われて調査活動に移せなかった。
(3)経営革新支援事例
WBPSでは内部環境分析について経営者をはじめとした社内各部署のメンバーを交えて行うことによって、自社の保有技術の再確認によるコア・コンピタンスの発見とその応用分野の研究、さらに現場で発生しているさまざまな問題事項を分類することで企業全体にある根本問題についての徹底した考察を行った。外部環境分析についても社内各部署のメンバーを交えて同時に実施した。分析に必要なデータを持ち寄り、対象全員でSWOT分析を実施。開始当初は国内市場の縮小や金属製品の樹脂化といった弱み・脅威といった外部環境の変化によるネガティブな要素のみが列挙されたが、技術・製造・営業の責任者が議論するにつれ自社のある部分における技術的な優位性が認識された。このミーティングで自社としては当たり前の技術であるが、技術優位性が高く既存事業以外に応用可能なものも複数発見された。発見された優位性のある技術が応用可能な商品や市場について、参加者各自がデータを収集し仮説を構築・プレゼンテーションを行った。内容は全員により将来性・自社適合性・リスクなどが採点されて20案程度が3案にまで絞り込まれ、新規参入市場が確定した。
続いて新規参入市場において要求されると考えられる「多品種・少量・短納期」生産に対応するべくシステムを見直した。営業提案-研究開発-試作-量産までのプロセス短縮化に向けて討議を実施。各部署間の連携がうまくとれていないことが発覚し、さらに情報の属人化が社内で広く浸透していることが根本原因と判明した。これにより情報を共有化し変動に対応する為のシステムが必要と判断、新規にウェッブ・アイ社製の工程管理ソフト「工程s」とASPでEPM(Enterprise‐Project-Management-system)を構築する「プレガーレ」の導入を検討、段階的な導入が進んでいる。
さらに現場と管理職の認識の差を確認する為に現場作業者(パート・アルバイト含む)ほぼ全数に対するグループインタビューを実施。職場上長は同席させず、発言は匿名にて記録した。現場における作業場のストレスや不満を発言してもらうことで作業者と管理職の認識の差異を確認した。
その結果、企業として抱えている根本的な問題点を、1)情報の属人化、2)技術の属人化、3)工程内不良対策の3つに分類し、それぞれの改善策についてロジック・ツリーやMIECEといった思考ツールをミーティングで使用、参加者が以降も社内で問題解決に当たる際に活用できるように討議を行った。現在においてもこの3項目は同社の解決すべき課題とされており、様々な施策が継続して行われている。
月刊プレス技術2005年3月号:日刊工業新聞社掲載
参考:竹内工業株式会社


